中華料理というと、最近は大陸系中華か町中華に二極化しているような感もありますが、それらが対象にしている大衆的な客層よりはワンランク上の客層を狙った高級中華と言われる業態のお店もありますよね。ここで高級中華というのは、中国人が始められた老舗もあれば、日本人シェフが独自に開発されたお店もあってなかなか画一化は難しいのですが、だからこそ個性的なお店も多く、そこに中華料理の面白さがあるようにも思います。私のランチの主戦場である神保町にも、「揚子江菜館」や「漢陽楼」、「新世界菜館」といった中国人が始めた高級中華の老舗があります。稀に"本場系中華"なんて表現を使っている人もいますが、これだと大陸系中華もこういう高級中華も十把一絡げになってしまうので、私はこの表現は使わないようにしています。ところで、高級住宅街を多く抱える東急沿線エリアについても、最近は昔からある町中華が減って大陸系中華の勢いが目立つようになってきましたが、高級住宅街であるが故の特性として、このような高級中華のお店も目立つように思います。確たるバックデータがあるわけではありませんが、高級中華のお店の割合は他のエリアと比べると高いのではないかという気もします。つい先日訪れた自由が丘の「梅華」もまさにこの高級中華に分類されてしかるべきお店だと思いますし、目黒線・不動前の「好好」、東横線・学芸大学の「farm studio #203」といった食べログ中華料理百名店もあります。その他、百名店にこそランクインしていないものの、自由が丘の「蔭山樓」、中目黒の「JASMINE憶江南」、西小山の「コクエレ」、中目黒の「中国酒家 辰春」といったお店はかなり知名度も高く、地元民のみならず遠くからわざわざ食べにくる人もいるくらいのお店です。この日訪れた上野毛の当店もそんな高級中華と言っていいお店だと思います。当店は、フォローレビュアーさんのレビューを見てBMしていたお店になりますが、その方の表現を借りれば「高級住宅街の町中華」ということになるようです。上野毛も高級住宅街を控えた場所柄こういうお店が流行る素地があるということかと思います。当店の創業時期はInstagram情報によれば1968年(昭和43年)となっています。ということは、創業半世紀を優に超えた老舗ということになりますね。同じInstagram情報ではお店は店主さんと奥さん、お母さんに従業員3名を加えた6名で営んでいるとも書かれていました。当店へのアクセスは、上野毛駅の中央改札口から上野毛通りを右に出てすぐの信号(上野毛交番裏)を左折し100m少々進んだ左手になります。途中、左手に20名くらいの行列が出来ているお店がありましたが、これがパフェの超有名店「ラトリエ・ア・マ・ファソン」ですね。当店のランチタイムの営業は11時半からなのですが、この日はちょっと早めの11時22分頃に到着したところ、既にお店はスタンバイしており、お店を覗くと奥さんらしき女性から「どうぞ、どうぞ」と声が掛かりました。店内は、奥にL字型のカウンター席が12席あり、手前にテーブル席17席の計29席のキャパです。先客はおらず、私はカウンター席に案内されました。それほど広いお店ではないのですが、従業員は、厨房に男性3名、ホール係りが女性2名でInstagramに書かれている通りの陣容で、この時間帯、ご主人はお店に出ておられないようでした。着席するとメニューを持ってきてくれますが、やはり高級中華だけあって、例えばラーメン単品が@880円、五目チャーハン単品が@1,210円とお値段は高いです。平日ランチだとお得な定食メニューがあって、直近の写真投稿を見ると八宝菜や回鍋肉、酢豚、麻婆豆腐などの定食が餃子3個付きで@1,100円となっていますが、休日はこれがありません。今回はある程度織り込み済でしたので、注文は素直に決まって、桜エビのチャーハン@1,760円と焼き餃子@550円にしました。〆て2,310円のランチということになります。待つこと8分ほどで焼き餃子、その後2分ほどで桜エビのチャーハンが出来上がってきました。桜エビのチャーハンは、パラっと炒められた五目チャーハンに軽く炒めた桜エビがたっぷりと乗っています。全体が桜色に染まるくらいの桜エビの量です。そして、このチャーハン、味は絶品ですね。パラっとした仕上がりのチャーハンも美味しいですし、桜エビが加わることによる旨味の二重奏が素晴らしいです。その中で特に感じたのが油の美味しさ。中華料理は、炒めるにせよ揚げるにせよ油は付き物だとは思いますが、これだけ油のクオリティが料理全体に影響を及ぼすとは思いませんでした。桜エビの風味も良質の油が引き立てていると思います。最近食べたことがないくらい美味しいチャーハンでした。その油のクオリティは、焼き餃子でも同じことを感じることになります。この焼き餃子、中型の餃子が5個なのですが、カウンター越しに調理場面を眺めていると、餃子はまず金網に入れられてスープで茹でられており、その後に油をたっぷり引いた鉄鍋で焼き上げています。自家製の皮はかなり厚いので、スープで煮込んでも崩れないのだと思います。美しいきつね色に焼きあがった餃子は、熱々の油で揚げ気味に焼かれています。カリッとした焼き目と生地のモチモチとした食感、そして香味野菜を抑え気味にしてキャベツの甘さを引き出した餡とそこから染み出してくる肉汁、油の風味が絶妙のバランスです。特にタレをつけなくても美味しくいただけましたが、卓上には醤油、酢、ラー油の餃子3点セットが置かれてましたので半分はそれでいただきました。当店、半世紀の歴史は伊達ではなく、まさに職人技とも言うべき中華料理かくあるべしというものを見せてもらいました。実際、厨房におられた男性調理人3名はそれぞれ独立してもおかしくないくらいの力量をお持ちの方々とお見受けし、ちょっと勿体ないくらいにも思えました。この分だと何を食べても美味しいと思いますし、特にカウンター上に置かれて(吊るされて)いたチャーシューや腸詰めもとても美味しそうで、夜はこれをつまみにチビチビ飲るのもいいかもしれないですね。食べログ評価は3.5店に届いてませんが、レベル的には百名店と比べても全く遜色が無い名店だと思います。